「さん?」
花道の声から逃れるように走っていると、聞いたことのある声に呼び止められた。
声の聞こえたほうを振り向くと、そこには。
「仙道くん・・・」
Time left behind to me 〜私に残された時間〜26
仙道に連れられ、近くの公園のベンチに座らされた。
はなんとか気を落ち着かせ、事のあらましを話した。
「そうなんだ」
「花道の言ってることもちゃんと分かるよ。でも、怖いの・・・」
手が震える。涙がまた溢れてきて、顔を見られたくなくて下を向いた。
「さんなら大丈夫だよ」
優しく、手を覆うように握られる。
ゆっくりと顔を上げると仙道は優しい顔をしていた。
「俺、さんなら大丈夫だって信じてる。
さんはしたいことがあるんでしょ?ならきっと大丈夫だよ」
「もしダメだったら・・・仙道くん、責任取ってくれる?」
死んでしまったら責任もなんも無いけど。
「もちろん」
仙道は笑顔を浮かべながら言った。
「さんの変わりにバスケはずっと続けるし、ずっとさんを想い続ける」
「想いって・・・たまに思い出す程度でいいよ」
「嫌だよ。俺はさんが好きなんだ。
だからさん以外の人間を好きにならない。さんだけを一生想い続ける」
「仙道くん・・・」
は仙道を見つめる。
仙道は相変わらず優しい笑顔を浮かべたままで、は自分の頬が熱くなるのが分かった。
「えっと・・・あの・・・」
「返事はいいよ。さんが帰ってきたら、答え聞かして?」
「・・・うん」
「待ってる。さんが元気になって帰ってくるのを。
だから、大丈夫だよ」
「大丈夫」なんて根拠の無い言葉。それでも、とても嬉しい言葉。力をくれる言葉。
「待ってる」。待っていてくれる人が居る。
自分が帰ってくるのを、自分を好きだと言ってくれる人が。
「ありがとう、仙道くん。私、頑張ってみるよ」
「さん、頑張ってね」
「ありがとう彩子ちゃん」
彩子は涙目になりながらに抱きつく。
見送りには色んな人が来てくれた。
友達やクラスメイトの牧はもちろん、神や後輩君、湘北の皆や、綾南の人たちまで来てくれた。
たった一人を除いて。
「仙道の奴どこにいんだよ!?」
そう仙道だけが見送りに来ていなかった。
「越野君、仙道くんとはもう会ってきたから」
「え?そうなんですか?」
「いつの間に合ったんだ?」
「ヒミツ」
そう言って笑うと、皆不思議そうな顔をした。
「それじゃあ、行ってきます」
「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」
「待ってるよ、」
空の向こうへ飛んでいく飛行機を眺めながら、小さく呟く。
「いってらっしゃい」
Fin...