枕投げ会場となった部屋から出て、自分の部屋に戻ってくると丁度自分の携帯が鳴った。
画面を見てみると、剣菱の名前が映し出されていた。
は何のためらいもなく、電話に出る。
「もしもし、剣菱?」
『あっ、?びみょ〜こんばんわ〜。
今時間大丈夫〜?』
「うん、まだ平気だよ」
『よかった〜。実はさ、に聞いておきたいことがあったんだ〜』
「そうなの?でも、珍しいね、剣菱が電話かけてくるなんて」
いつも部活の連絡とかは紅印からだったし、
他のメンバーと連絡を取るときは電話よりもメールでのやり取りのが多かった。
『うん、電話のがいいと思って。誰が聞くか話し合ったりしたんだよね〜』
「何もそこまでしなくても・・・。剣菱たちは一体何を聞きたいの?」
そういうと、剣菱が少し声のトーンを下げて、ためらいがちにもはっきりとした声で言った。
『・・・が試合に出なくなった理由』
思わずは息を呑む。
『俺らさ、の試合のビデオ、見たんだ』
「・・・それって、最後に出た試合のビデオ?」
『うん』
「そっか・・・」
の声のトーンも下がる。
剣菱は電話越しからでも、の声から哀愁の色が漂っているのが分かった。
「・・・監督から、何か聞いた?」
『いや、ただその試合以降、姿を消したってことぐらいしか』
「そっか」
『・・・』
「あたしが試合に出なくなった理由は簡単。ソフト部を止めたから」
『なら、何でソフト部を止めたの?』
「・・・」
『ごめん、不躾だったね。ほんとは知りたいけど、やめておくよ』
「・・・どうして?」
『に辛い思いをさせたくないから』
は何も言えなくなった。
剣菱は優しい声で言葉を続ける。
『は俺・・・いや、俺たちにとって大切な存在だから。
だから、傷ついたり、悲しそうな顔とかさせたくないんだ』
剣菱からの、温かい言葉が胸に染み込んでいく。
は耐え切れずに涙を零した。
何も言えずに泣き続けていると、剣菱はが泣いていることに気付いた。
『俺、なんかまずいこと言った!?』
『泣かないで〜!!』と剣菱は電話越しでも分かるぐらい慌てていて。
はその様子が簡単に想像出来て、思わず笑った。
「ご、ごめ・・・大、丈夫」
泣いているんだか、笑っているのか分からない声で、はやっと言葉を発する。
「ありがとう、剣菱。ありがとう・・・」
涙を拭きながら、精一杯の感謝の気持ちを伝える。
「話す、よ。合宿から戻ってきたときに、全部」
『無理してない?』
「してないよ。大丈夫。
皆に、聞いて欲しいんだ。皆には自分の口から話したい。
だから待ってて?」
あたしにとって大切な人たちだから
隠し事はしたくないから
だから
もう少しだけ、待ってて――――ね?
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