最初はあいつが嫌いだった。
母さんに話を聞いたとき、はっきり言って嫌だった。
まったく関係ないヤツを居候させるっていうこともあったけど、同じ年ぐらいの女ってだけで嫌だった。
そういう奴は俺を見ると大抵騒がしくて、ウザイ奴ばっかりだったから。
リビングでテレビを見ていると、そいつが玲と一緒に入ってきた。
一応挨拶ぐらいはしなくちゃなと思い声をかけた。
すると、少し居心地悪そうに話していたが、俺は気にも留めなかった。
ご飯を食べてるときは一度も話さなかった。
母さんや父さんとしゃべっている様子を見ていると、落ち着きのある奴のように見えた。
けれど、一度も笑顔を見せなかった。
あいつ、はご飯を食べ終えるとリビングを出て行った。
父さんと母さんはため息をつく。
「やっぱり、すぐ慣れてはもらえないのね」
「色々と気持ちの整理もあるのだろう」
「でももともとおとなしい子だったんだけど、今回のことで拍車がかかってるように見えるのよ」
「おば様もおじ様もそう気を落とさないで。そのうち慣れてくれるわよ」
母さんにの家族は事故で死んだと聞かされた。
母さんとの母親が友達だったらしく、身寄りがないということで引き取ったんだそうだ。
俺にはの悲しみとかよくわかんないけど、いつもの騒がしい奴らは違う事は分かった。
リビングでテレビを見ていると、母さんに「ちゃんにお風呂に入るように言って」と頼まれた。
仕方なくテレビを消して、の部屋へと向かった。
ドアをノックすると返事が聞こえた。
なのでドアを開けて見ると、とても殺風景な部屋が見えた。
ベッドと机と箪笥と・・・必要最低限の物しか置いてなかった。
俺は用件を伝えると、が俺に対して敬語なのが気になった。
「あんたさ、何で敬語なの?」
「えっ、いや・・・その・・・」
「何、言いたい事があるならはっきり良いなよ」
俺は思わず強く言ってしまった。
すると、は怯えた感じは見せずに、けれども気まずそうに言った。
「初対面でいきなりタメ語は失礼かなと思いまして。
それに翼さんのが年上だし・・・」
「何で俺のが年上って知ってるの?」
すると、一瞬言葉に詰まっていたような気がしたがは普通に答えた。
「玲さんに聞いたんですよ」
「ふーん。まぁいいや。とりあえずこれからは家族なんだから敬語じゃなくていいから。
それから「翼さん」じゃなくて「翼」。分かった?」
「はい、じゃなくってうん。ありがとう翼」
初めての笑顔を見た。
優しい笑顔。
その笑顔を見て一瞬固まってしまったが、ここはポーカーフェイスで誤魔化した。
俺はそのままの部屋を出て、自分の部屋へと戻った。
中に入ってドアを閉めるとそのまま座り込んだ。
自分の顔が熱い。
まさかあんな笑顔を見せられるとは思いもよらなかった。
俺は顔の熱を冷ましながら、今日はもう寝ようと思いベッドに寝そべる。
今日は部活はなかったが、疲れていたらしくすぐに寝入ってしまった。
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翼さん先にお風呂に入っているということで。