試合開始直後、王子の挨拶が引き金となり初回からヒートアップしていた。
激しい攻防戦が続く中、私は玲の隣に座り選手の動きを正確にノートに書き込む。
試合が進むにつれ、桜上水にボールが渡りそのボールをシゲが自らもって行く。
そこで柾輝が立ちはだかるが、シゲはヒールリフティングで彼を抜く。
そして翼とシゲの一騎打ちとなり、シゲが「姫さん!勝負!!」と叫ぶ。
私は彼らのすさまじい攻防に思わず目を奪われた。
何度か攻防を繰り返すと、翼がシゲのキックフェイントに引っかかり抜かれそうになる。
だが、翼は回し蹴りでボールをカット。
それによりシゲは吹っ飛ばされるが、素早く右手をついて体勢を立て直した。
二人とも一歩も譲らず、とても楽しそうだった。
休憩タイムが入り、皆にドリンクを配りながらもさりげなくシゲを見る。
・・・肩大丈夫かな?
走るのも辛いくらいひどいって言ってた(というか書いてあった)けど。
テーピングすればちょっとはマシになると思うんだけどなぁ・・・
さりげなく見ていたつもりがいつの間にかじっと見つめていたらしく、シゲはこちらを向きにっこりと笑う。
「?」
翼の呼びかけに私ははっとして「何でもない」と言って誤魔化した。
そして休憩時間が終わり、ぞくぞくと選手がフィールドへと戻っていく。
そんな中、シゲが私の耳元ですれ違いざまに「内緒にしといてや」と言った。
ばっと振り返るとシゲはまたにっこりと笑って自分のポジションへと戻っていった。
・・・やっぱり、気付かれてたんだ。
試合終了。
2−1で桜上水が勝利。
六助は大声で泣き、そんな弟に五助が怒鳴る。
玲さんはすれ違いざまに翼の肩を叩き、翼は近くの椅子に腰掛けた。
私はとりあえず皆にタオルやドリンクを渡して回った。
柾輝に近寄ると翼のほうを向いていた。
「柾輝、これお願いしていい?」
そう言ってタオルを2枚手渡す。
柾輝は苦笑いしてそれを受け取り翼に近づく。
そして1枚のタオルを後ろから翼の頭にタオルを被せてやった。
驚いた翼は憎まれ口を叩き、柾輝はそれを受け流していた。
小さな声で翼がお礼を言ったのを柾輝が気付いたかどうかは分からないけど。
一通りタオルやドリンクを配り、テープをもってシゲのもとへと向かった。
シゲは有希に文句を言われている。
「桜上水の11番さん」
声をかけると二人が振り返る。
「あれ?どうしたの?」
「うん、ちょっと」
「飛葉のマネージャーさんやないか。さっきはどうも」
「いえいえ。それよりも病院行ったほうがいいんじゃない?」
「こんぐらい大丈夫やって」
有希は首をかしげる。
そこへ松下さんがやって来てシゲの肩を掴んだ。
するとシゲはあまりの痛みに言葉を失くしている。
「ったく無茶しやがって。その状態じゃ走るのも辛かった筈だ。
我慢強いのもいいが・・・」
松下さんは呆れ、王子は茶化している。
それを聞いていたカザ君はシゲに声をかける。
「シゲさん」
「お前強うなったなぁ」
シゲの言葉にカザ君は嬉しそうに返事をした。
その笑顔が可愛いノなんのって・・・・
シゲは「口答えしたんはムカつく」と言って、彼の首を絞め始める。
・・・カザ君、苦しそうなんだけど・・・
っていうか、試合終わった後なのに元気だねぇ・・・
そんな様子の彼らに、苦笑いをしながらも自分の目的を果たすために止めに入る。
「そんなことしてないで、11番さんちょっといいかしら」
「なんや?」
シゲはカザ君を開放し、私に近寄る。
「その肩、応急処置しといたほうがいいでしょ。テーピングしてあげる」
そう言って持っていたテープを軽く持ち上げる。
「わざわざその為に来たんか?おおきにな」
シゲはお礼を言い、上のユニフォームを脱ぐ。
その瞬間女の子たちの悲鳴が聞こえた気がしたが、気にせず近寄ってテープを彼の身体へと巻きつける。
「なんや、ちょっとは反応してくれてもええやん」
「あたしにそんな可愛らしい反応を求めないで欲しいわ」
軽口を叩きながらも着実に手を動かしてテーピングしていく。
巻きつけ終わり、仕上げといった風にテーピングされているほうの肩を叩いた。
するとシゲは声にならない悲鳴を上げる。
「あっ、ごめん。ついやっちゃった」
「・・・あんさん。絶対わざとやろ」
シゲは恨めしそうな目で見ながら言い、私は笑ってごまかした。
こうして試合は幕を閉じた。
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ごめんなさい、後半面倒だったので飛ばしました(汗)
試合シーンとかのつっこみはスルーの方向で。