今日一日はどこか様子が違った気がする。
今朝も、試合が始まるまでの時間も。
休憩が入ったときには、皆にねぎらいの言葉をかけながらもさりげなく佐藤を見ているのは分かった。
何故かそれがムカついたけど、表には出さずに声をかけると「なんでもない」と誤魔化されて、さらにムカついた。
プレーに支障はきたさなかったけどね。
試合が終わった後、俺は悔しくて泣いた。
柾輝のおかげで他の奴らに涙は見せることはなかった。
涙も止まり、片付けなければと思って顔を上げると、佐藤がの前でユニフォームを脱いだところだった。
俺は一瞬固まり、女子が「キャー」とでかい声を出した。
うるさいなと騒いだ女たちをちらりと見て、顔を戻すとまた固まってしまった。
が佐藤の身体にテーピングをしていた。
その瞬間体もやもやしたものが体の中で渦巻いたのが分かった。
俺は見ているのが不愉快になり、その場を去り片づけをし始めた。
家に帰ると、は部屋に閉じこもった。
夕飯時になっても出てこなくて、玲の命令での様子を見に行くことになった。
「俺だけど、入っていい?」
そういうと小さな声で「どうぞ」と答えが返ってきた。
中に入るとベッドの上でが蹲っていた。
はこちらを見て体制を変え、ベッドに座りなおした。
「どうしたの?」
「別に。ただの様子が変だった気がしたから見に来ただけ」
が目を見開いたのが分かった。
でも、それは一瞬のことですぐに表情を戻す。
けれどどこか辛そうな顔をしていた。
「気のせいじゃない?翼今日の試合で疲れてるでしょ。
早く休んだほうがいいよ」
「誤魔化すなよ」
「誤魔化してなんかないよ。本当何でもないって」
「ならどうしてそんな顔してんだよ」
俺はベッドに座っているに近づき、頬を撫でてやる。
するとは泣きそうな顔になった。
次に頭を優しく撫でてやると、の頬を涙が流れる。
俺はそれを見た瞬間綺麗だと思った。
「あれ・・・?な、んで?おかしいな・・・」
は涙を止めようと目を擦る。
俺はの手を掴んで止めさせて、優しく抱きしめてやった。
「今は泣きなよ。俺以外誰も見てないからさ」
は声を殺しながら涙を零した。
抱きしめて、頭を撫でてやっていると、いつの間にかが寝てしまっていた。
俺はをベッドに寝かして、布団をかけてやる。
顔には涙の後が残っており、思わず頬を撫でる。
ふと、と佐藤の様子を思い出した。
胸の中がまたもやもやする。
俺はの唇に目が行き・・・・・・
にキスをする。
すぐ正気に戻ったけど、居た堪れなくなっての部屋を出た。
自分の部屋に入り、ドアを閉めそのまま座り込む。
何やってんだよ、俺!
分けわかんねぇ!!
俺は顔を真っ赤にしながら考えた。
と佐藤のこと思い出したらなんかムカついて。
仲がよさそうで・・・を取られた気分になって・・・・・・・・
俺、のこと好きかもしんねぇ・・・・・
その後、俺は落ち着いてからの様子を見に行った。
するとはもう起きていた。
目が合った瞬間、さっきのことを思い出して顔が少しだけ赤くなった気がした。
けど俺は冷静を保ってに声をかける。
「、大丈夫?」
「あっ、うん。いきなり泣いてごめんね。
翼疲れてるのに・・・」
「見くびらないでよ。俺はそんなにやわじゃないよ」
「うん、そうだね・・・・・・・ねぇ、翼はさ・・・」
は下を向く。
「・・・今日の試合で負けたこと、後悔してる?」
俺はそれを聞き、が悩んでた理由が分かった。
まだ何か隠しているような気がするが、真剣な声で聞いてくるのでまじめに答えた。
「・・・後悔してないって言ったら嘘になるけど、良い試合だったと思うよ。
自分の力を出し切ってそれで負けたから悔いはそんなにない。
そりゃ作戦上ああすれば良かったとか反省する所はあるけど。
だから、今度は負けないように強くなる。
その為には皆でやっていくしかないんだ。
もちろんも含めて、だからな」
はばっと顔を上げる。
驚きとどこか不安が交じり合った顔をしていた。
「は必要な人材だって事忘れるなよ」
俺は笑顔で言ってやるとはまた涙目になる。
泣かないよう我慢して笑顔で返事をするを見て、「可愛い」と思いながらも笑いながらを抱きしめた。
「何泣いてんだよ」
「〜〜、泣いてなんかない」
意地を張るにさらに笑いがこみ上げて「あはは」と笑いながら俺はまた頭を撫でてやる。
そしたらも笑い始めて、二人で笑い合った。
俺は、お前が好きだよ。
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