「それじゃあ、行ってきます」
は新幹線に乗り込み、玲さんのほうを振り返る。
「ほんとに翼たちに言わなくていいの?」
「はい。大会が近いんだから、翼たちには練習してもらわなきゃ」
「でも、行くことぐらい言ってもよかったんじゃない?」
「言ったらきっと、見送りに来ちゃうと思うんです」
「玲さんに来てもらっただけで十分です」とは言った。
それを聞いた玲さんは苦笑いをした。
「ほんと、は男心が分かってないわね」
「どういう意味ですか、玲さん。玲さんだって女でしょ」
「はぁ〜。男心っていうより翼心ね」
「はい?」
理由が分からず、は首をかしげる。
一方、玲さんは苦笑いを浮かべるだけだった。
「気にしないで。
あなたは怪我を治すことに専念してちょうだい」
「はぁ。まぁ、できるだけ早く帰れるよう頑張ります」
「そうしてちょうだい。あなたが居ないと、私も翼も寂しいもの。
あっもちろん、帰ってきたらビシバシ働いてもらうからね。
飛葉のマネージャーとしても、選抜のマネージャーとしても」
「・・・え?」
思わずはマヌケな声を出す。
「ちょっと待ってください、玲さん。あたしって選抜のマネージャーなんですか!?」
「もちろんよ」
至極当然のように言い放つ玲さん。
はもうため息しか出なかった。
「・・・あたし帰ってきたくないかも」
「何か言ったかしら?」
「いいえ!何でもありません!!」
玲さんとじゃれあってると、不意に放送が入った。
『○番線、ドアが閉まります。
ご注意ください』
「あっ、もう時間だ」
「そうみたいね。・・・手術とリハビリ、頑張ってね」
「はい」
ピーーーーー
「いってきます」
「いってらっしゃい」
プシュ〜ゥ
ドアが閉まり、ゴトン、ゴトンとゆっくりと新幹線が動き出す。
玲さんが手を振ってくれたので、は手を振り返した。
玲さんが見えなくなると、はゆっくりと手を下ろした。
そして切符に書かれている指定席を探す。
番号を見てみると、その場から近い席だったらしくすぐに見つかった。
窓際に座り、空を眺める。
窓から見える空は、とても綺麗な青空だった。
翼心、ね・・・
ごめん、ね―――・・・・ 翼
その頃、飛葉中では。
「・・・・?」
翼は思わず空を見上げた。
「翼?」
「・・・なんでもない」
そう言って、翼は空から視線をはずす。
彼の元に、一迅の風が吹いた。
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