リハビリが終わり、病院から帰る途中携帯が鳴った。誰だろうとディスプレイを見るが非通知になっていてわからない。不審に思いながらも一応電話に出てみた。
「・・・もしもし?」
『よう、俺だ』
「おかけになった番号は不審者からの電話は出ないことになっております。
電源を切るのでご了承ください」
「それでは」と言って耳から電話をはずすと相手の焦っている声が聞こてきた。
『おまっ!俺だ俺!カミサマ!!』
「ああ、カミサマですか。全然気づきませんでしたよ」
『(ぜってーわざとだ!つか、どういう対応の仕方だ!)』
「この間のおかげで気分が滅入ってるの。用件は手短に」
『・・・・・・』
沈黙するカミサマに「用がないのなら切ります」と言うと慌てて引き止めてくる。
『待て!ちょっと待て!!お前俺で遊んでるだろ』
「そんなことはないです。ちょっと日頃のお返しをしてるだけで」
『(それを遊んでるって言うんだ!)』
「で?話を進めてくれません?」
『(こいつ!後で覚えてろよ!!)・・・せっかくいいことを教えてやろうかと思ったのに』
「いいこと?」
は疑問系で聞き返すと、電話越しにカミサマがにやりと笑ったような気がした。
「わぁ・・・」
カミサマに言われた場所に行くとそこにはスタジアムがあった。中に入るとスタンドから綺麗な芝生が見える。フィールドには九州選抜とかいてあるユニフォームと別のユニフォームが見えた。どうやら練習試合らしく、二つのチームがボールを追いかけて入り乱れていた。は椅子に座り、フィールドを見下ろす。スタンドとフィールドの距離はあまりないので試合の様子が良く見える。
ゴールのほうを見るとカズが立っており、昭栄やヨッさんもDFの位置にいた。ボールは相手チームでどんどんと攻めてくる。九州選抜選手は皆体が大きく、守りに入っていても威圧感が漂っていた。ボールがFWらしき人に渡り、思いっきり蹴ってシュートをする。が、カズが横にとびボールをはじき返す。それでも相手チームの勢いは止まらず、もう一度シュートするもまたもやカズが止める。そしてボールをキャッチしたカズは前線にボールを送った。それがカウンターとなり、今度はカズのチームが攻めに回った。相手チームも急いで戻るけれど、九州選抜の方が早くあっという間にゴールを決めた。
試合が終わり、挨拶をする。結局カズは一度もゴールをさせず、3−0の圧勝だった。
はノートを持ってくればよかったと後悔しながら試合の余韻に浸る。ぼーっと選手達のほうを見ていると、帽子をはずしタオルで汗を拭いていたカズとばちっと目が合った。
「!?」
驚いた顔をするカズ。フィールドにカズの声が響き、他の選手達も一斉にこちらを向いた。
びくっ!・・・そんな大きな声で呼ばなくても聞こえてるのに!つか、びびった。
あ〜あ、すっごい見られてるんだけど。
の気持ちを知ってか知らずか、(たぶん後者だろう)カズはずんずんと歩いてきた。
のほうが高い位置に居るため、カズは必然的に上目づかいになる。
そのままにしてればかわいいのに、カズはかわいらしさを感じさせない声を出した。
「何でここにおるけん!?」
「えっと・・・ちょっと散歩がてらに・・・」
「散歩って、はぁ。・・・病院は?」
「それは行ってきたよ。ちょっと散策に歩き回ってたらここに着いたの」
さすがにカミサマに教えてもらったとは言えず、は笑顔で大嘘を吐いた。
「お前、帰り道ばわかっちゃろうな?」
「え・・・?」
行きはカミサマに教えてもらいながら来たから何とかなったが、帰りははっきり言って自信がない。思わず黙りこくっていると、カズがため息をついた。
「一緒に帰るけん。お前そこで待っとけ」
「え?いいの?」
「ばってんお前一人じゃ帰れんやろ?」
「・・・そうです」
返す言葉もございません・・・
帰り道カズと肩を並べて歩きながら、は興奮気味に今日の試合の感想を述べる。それを黙って聞いたカズはの顔を見てはぁとため息をついて、いきなりの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「わっ、カズ?」
「・・・安心したたい」
「?」
目線を合わせるように見上げると、カズはほっとしたような笑みを浮かべていた。
「最近お前元気なかったけん」
「え、そんなこと・・・」
「ある。心配かけないよう笑顔ば振りまいとったけどバレバレっちゃね。
本当は理由聞こう思うとったけど、まぁええ。
元気になったみたいやからな」
「カズ・・・」
心配をかけないようにしてたのに結局はかけてしまった自分の情けなさと、隠していたのに気づいてくれたということに対する嬉しさが混ざり合って複雑な気持ちだ。
曖昧な笑みを浮かべていると、カズはもう一度の頭を優しく撫でた。
「何かあっちゃら言え。いつでも力になったるけん」
「・・・うん。ありがとう」
その後、再び歩き出した時、二人は手を繋いで帰った。
隣に居るぬくもりが自分を元気付けてくれる。
自分に勇気をくれる。
私に力をください。
彼に想いを告げる力を。
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↓おまけ
歩きながら、はノートを見ながらカズと今日の試合について話していた。
すると、カズがふと実に不思議そうに言った。
「ばってんお前東京選抜のマネやろ?アドバイスしてええんか?」
「カズたちが強くなるのは良いことだと思うし。それに対戦するなら強い相手と、でしょ?」
「そのほうが倒しがいあると思うんだよね」と言うと、カズは目を点にして。
そして挑戦的な目をし、口の端を上げてにやりと笑みを浮かべた。
「後で後悔するなよ」