9話 正体
「そなた、わしとともに来ないか?」
声をかけてきたのは法皇様のようだ。
いきなりのことでは戸惑った。
「えっと、それはどういう・・・」
「わしの白拍子としてともに来ないかというておるのじゃ」
困った。
今はヒノエ君のところにお世話になっているからかってするわけにはいかないし・・・
というかあんなおじさんのところになんて行きたくない。
もんもんと考えていると、誰かに抱き寄せられた。
「法皇様。
彼女は俺の許嫁です。
勝手なことはしないで欲しいね」
「ヒ、ヒノエ君!?」
「ほう、そなたは熊野別当。そち、やつの言っていることはまことか?」
法皇様はに聞いてきた。
戸惑っているとヒノエが「俺に合わせて」と耳打ちした。
「えっと、そうなんです・・・」
は顔を赤らめて答える。
「しかし、そんなことは聞いたことが・・・」
「まだ正式に婚姻をあげたわけではないんでね。
でもは俺の姫君だよ」
「残念だ・・・それでは仕方がないのぉ」
そう言って法皇様は行ってしまった。
「大丈夫だったかい、姫君?」
ヒノエに声をかけられたが、言葉を返すことは叶わなかった。
は呆然とする。
法皇様はヒノエ君のことを熊野別当って言った?
の顔を見てヒノエは不思議そうな顔をする。
「姫君?」
「ヒノエ君が・・・熊野別当・・なの?」
は困惑した目をした。
それを見たヒノエは驚いた顔をし、そして顔に手を当てて失敗したという顔をした。
「えっと、姫君。それは・・・」
「ねぇ、そうなの?ヒノエ君は私のこと騙していたの!?」
の目にはどんどんと涙が溢れていく。
「や、やばいな・・・泣かないでくれ、姫君・・・」
「ねぇ・・なんで・・・?なんで教えてくれなかったの・・・?」
ヒノエはを抱き寄せようとする。
しかしはその腕を拒絶した。
「ヒノエ君のばかぁ!」
そう言っては走り出してしまった。
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